TCFD開示 Task Force on Climate-related Financial Disclosures
TCFD提言に基づく情報開示
現在、気候変動は、最も重要な社会課題の一つであり、エネルギー事業や山林経営を通じ、木質資源を循環活用した持続可能な社会への貢献を目指すエフオングループにとっても、解決すべき経営課題です。2022年9月、当社はTCFD提言への賛同を表明しました。提言を踏まえ、気候変動の影響に関する情報の開示を行います。
ガバナンス
当社は、2022年10月、「サステナビリティ推進委員会」及び「サステナビリティ推進会議」を設置いたしました。 「サステナビリティ推進委員会」は、代表取締役社長を委員長として、社内取締役から構成され、当社グループの気候変動をはじめとするサステナビリティに関わる方針や中長期的な戦略、目標、気候変動に関するリスクと機会について年に2回以上審議を行い、その結果を取締役会に上程しています。当社では、2022年10月の設置以来、計5回の委員会を開催し、推進体制の整備を行った他、リスクと機会の特定、財務インパクトを踏まえた対応策や指標等について審議を行いました。取締役会は、気候関連事項に対処するための目標と指標等に対する進捗状況についてサステナビリティ推進委員会から報告を受け、実行を監督しています。決定された方針や目標等の遂行状況についてのモニタリングも行い改善を議論するとともに、将来の戦略やサステナビリティ方針等に活かしていきます。 「サステナビリティ推進会議」は、役職員から構成され、取締役会とサステナビリティ推進委員会で決定された方針等のもとで具体策の検討と実行を行うほか、方針等に対する各部門からの情報集約の機能も担います。サステナビリティ推進会議は年4回以上開催され、その結果をサステナビリティ推進委員会に報告しています。
戦略
<前提となるシナリオ>
当社では、脱炭素社会実現に向けた厳しい規制が課され気候変動の進展を抑えられた世界を想定した1.5℃シナリオと、規制が強化されず気候変動が進み台風や集中豪雨等の自然災害が激甚化する世界を想定した4℃シナリオを想定し、リスクと機会及び対応策について検討を行いました。 1.5℃の世界では、2050年まで道のりとして、政策と法の執行およびテクノロジーの進展などにより、カーボンニュートラルが達成されるシナリオを検討しました。 カーボンニュートラルとなる2050年までには、化石燃料の使用が削減され、再生可能エネルギー発電が拡大するとともに、大型車両はハイブリッド化を経て電動化が進むことが予測されます。 この際、最終的にカーボンニュートラルを達成するにはオフセットが必要となり、森林由来カーボン・クレジットが重要な役割を果たすものと考えられます。
<影響度の定義>
大:30億円以上、中:30億円未満、5億円以上、小:5億円未満
<シナリオ分析に基づく当社のリスクと機会>
気候変動に関わる制度、市場、気象などの変化は、当社の事業活動にとってリスクとなりうる一方で、当社の事業構成上、大きな事業機会であると考えています。当社ではサステナビリティ推進会議の下、TCFD開示作業部会を設け、2022年10月より23年2月まで、上記前提によるシナリオ分析に基づき気候変動の移行機会とリスクおよび物理リスクの定性評価及び定量評価を行い、その結果についてサステナビリティ推進会議に報告し、サステナビリティ推進委員会、取締役会にて特定をしました。この際、1.5℃シナリオは、IEAのWEO2022(NZE)、4℃シナリオは、IPCC第5次評価報告書(RCP8.5)、第6次評価報告書(SSP5-8.5)を利用して分析しました。特定した主なリスクと機会、当社への影響と対応策は下記の通りです。
移行機会とリスク(政策と法/市場/テクノロジー)
区分 | 事業環境 | 機会/リスク | 当社への影響 | |||
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内容 | 2030年 | 2050年 | ||||
政策と法 |
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機会 |
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中 | 大 |
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中 | 大 | |||
リスク |
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小 | 中 | ||
市場 | 機会 |
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中 | 中 | |
リスク |
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中 | 大 | ||
テクノロジー |
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機会 |
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中 | 大 |
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小 | 中 | |||
リスク |
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小 | 大 |
※早生樹:「早く」「成長する」「樹種」の総称です。一般的には、スギやヒノキに比べて初期の樹高成長量や伐期までの材積成長量の大きな樹種を指します。10年から25年位の比較的短伐期での収穫が可能で、センダン・ユリノキ・チャンチンモドキ・コウヨウザン等の種類があります。(出典:近畿中国森林管理局)
※エリートツリー:各地の山で選抜された精英樹(第1世代)の中でも、特に優れたものを交配した苗木の中から選ばれた、第2世代以降の精英樹の総称です。主に成長性が改良されており、特に初期成長の早さが特徴です。材質や通直性にも優れています。(出典:森林総合研究所)
対応策
- 純国産木材活用による森林資源循環型の再生可能エネルギーとして、バイオマス発電事業と小売事業を積極的に展開
- エネルギー消費量削減に寄与する革新技術の早期導入による、省エネルギー支援事業強化
- 社有林の拡大と維持管理、苗木生産、植林を推進し、森林由来クレジットの創出
- 林業就業者の人材育成を進めるほか、高性能林業機械、ICT、早生樹・エリートツリーの導入を進め、山林経営を効率化
- 効率化された社有林から燃料調達量の拡大を進め、FIT・FIP後を見据えた燃料調達と発電コスト低減
- 各拠点で使用する重機・大型トラックのハイブリッド化、電動化や電力の再エネ化等による、GHG排出量の削減
移行機会とリスク(評判)
区分 | 事業環境 | 機会/リスク | 当社への影響 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
内容 | 2030年 | 2050年 | ||||
評判 |
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機会 |
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中 | 大 |
リスク |
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中 | 大 |
対応策
・ステークホルダーへの情報開示による、企業価値向上 ・純国産木材由来のバイオマス発電と山林の一体的な経営による、資源の循環再生や持続可能性に関する発信の強化
物理リスク
区分 | 事業環境 | 機会/リスク | 当社への影響 | |||
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内容 | 2030年 | 2050年 | ||||
急性的 |
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リスク |
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中 | 中 |
対応策
・事業継続計画(BCP)による対策強化 ・燃料調達網の強化
リスク管理
気候関連リスクを含むサステナビリティに関連するリスクについては、サステナビリティ推進委員会において識別を行い、内部統制委員会でその管理を行い、取締役会に報告しています。また、サステナビリティに関連するリスク対策の実行は、サステナビリティ推進会議にて行うものとし、その実施状況を内部統制委員会に報告します。なお、内部統制委員会では、全社的なリスク管理を行っていますが、統合的リスク管理の高度化に向けて、引き続きリスク管理の体制については検討を進め、適宜見直していきます。
指標と目標
当社グループの2022年4月から23年3月までのGHG排出量は、以下の通りです。
Scope 1(当社グループによる温室効果ガスの直接排出)
: 134,268t-CO2
Scope 2(他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出)
: 300t-CO2(マーケット基準)
576t-CO2(ロケーション基準)
※温対法係数を活用した推計値です。今後は実測値に基づく排出量算定を予定しております。
<実測値に基づくGHG排出量>
2021年7月から2022年6月までのGHG排出量について実測値に基づいて算定しました。
GHG排出量:4,595t-CO2(内、Scope 1:4,173t-CO2、Scope 2:422t-CO2)
※木質チップ(木材)由来の排出量を実測値に基づいて算定しています。
<目標および指標>
GHG排出量の算定結果やシナリオ分析の結果を踏まえ、当社グループの目標と指標を下記の通り設定しました。
1. 木質バイオマス発電の発電量拡大による当社の成長と社会のカーボンニュートラルへの貢献
・GHG排出量 2030年までに2021年度比50%削減(木質チップ由来の排出量を除く)
※2050年までにカーボンニュートラルを達成(木質チップ由来の排出量を含む)
・木質バイオマス発電量 2021年度:5億kWh 2030年度:10億kWh
エフオングループ トランジション戦略
2. 社有林の拡大及び伐採後の植林により、森林吸収量を拡大して気候変動抑制に貢献するとともに、カーボン・クレジットを創出しオフセットに寄与
・2021年度:森林CO2吸収量3,040t-CO2
・2030年度:森林CO2吸収量6,000t-CO2